洒落怖全話

鏡の中

洒落怖
この記事は約2分で読めます。

鏡の中の話だ。

小さい頃、俺は何時も鏡に向かって話し掛けていたという。もちろん、俺自身にはハッキリとした記憶は無いが、親戚が集まるような場面になると決まって誰かがその話を始める。

近所には同じ年くらいの子供が居なかったので、寂しくて鏡の自分に語りかけていた。そういう事になっている。

事実は違っているが親や親戚に話せるはずも無い。だから、ここに書いてみようと思う。

他の板なら頭がオカシイと思われるだろう。でも、この板のこのスレッドなら平気だ。

俺はただ、誰かに話したかっただけで、相談に乗って欲しいわけじゃないし、暇つぶしに読む人も居るかもしれない。どうせ誰にも解決できない。

小さい頃の記憶は曖昧なので書きようが無い。はっきり鏡に人影らしきものが映るようになったのは、中学の頃だった。

昼も夜も無い。鏡を見ていると、俺の後ろに誰かが横切ったり、誰かが覗き込んでいるような顔が映るようになった。

そうなると人の視線を感じたり、気配を感じるようになる。落ち着けないし、深い眠りにつくことも出来なくなった。

気の所為かもしれないが、俺は自分の部屋から鏡を無くした。それは一月程で消えた。

すっかり見ることも無くなって忘れていた。十年経って、俺は一人暮らしを始めた。

先週の事だ。夜中に車を運転していてルームミラーに目をやると、そこに人の顔があった。

急ブレーキで停車し、後部シートを振り返ったが誰もいない。だが、ミラーの中の顔は消えずに俺を見ていた。

不思議なことに、前髪がミラーから生えてユラユラ揺れている。やっと気がついた。

鏡に映っている訳じゃない。鏡の中から俺を見ていたんだと。

車をそこに置き、一時間かけて歩いて帰った。今、テレビから這い出してくる貞子の映画を思い出している。

正直言って正気でいる自信が無い。

コメント