昔勤めていた会社での話。
そこは同系列の別会社と一緒に大きな部屋を借りて二つに仕切り、それぞれの社員がドアで出入りできるようにしてあった。
仕切りはどちらの会社の人も通れるように1m程の隙間が二箇所ほど空けて有り、昼間私はそこで電話番兼で一般事務の仕事をしていた。
ある日の夕刻 いつものように隣の部屋のドアが開く音がしたので営業の人に渡す電話のメモを手に隙間から隣の部屋へ行った。
が。
誰もいない。
確かに靴音はしていたし、ドアの開く音はしていたのに。
先輩から以前『この部屋、(そういうのが)出るんだよ』とは聞かされていたけど、まさか自分のいる時に出るとは。当然焦るわ、顔は引きつるわで他の営業さんが戻るまで無茶苦茶怖かったのは言うまでもない。
しかし、連日とまではいかずとも何回もそういう事が度重なると人間慣れてくるものらしい。ドアの音がする度に「お帰りなさい」「今日は早かったですね」と(ややヤケ気味に)声をかけているうちにその靴音とかはしなくなった。・・・靴音をさせてドアを開ける音と共に戻ってきていた『彼』は、今もそこに帰社しているのだろうか?
余談ですがその会社、今でも大阪のオフィス街に現存してました。
戦時中は空襲があってその辺りにあった堀とかで大勢死んだ人が浮いていたと言う話をモータープールのおじさんに聞いたのはその会社を辞めて以降です。
場所は北御堂付近。近所に同名のお寺があります。
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