これは俺の兄ちゃんの高校の時の友達の話です。
そいつは当時柴犬を飼っていて、毎朝散歩に出かけるのが日課だったらしい。
そいつは沿線の近くに家があったらしいんだけど、近くに公園があって、線路沿いをずっと歩いて踏切を渡って公園に行って帰ってくる、というのがお決まりの散歩コースだったようだ。
そしてその朝もそいつはいつも通りに犬を連れて散歩に出掛けた。
でも、そいつの家の付近は住宅街ということもあってか朝はそんなに人通りがないので、犬には一応リードは付けていたけど、車道と踏切の近く意外はほとんど放し飼い状態で散歩していたらしい。
線路沿いを少し行った所にジュースの自販機があって、そこでそいつは立ち止まってジュース一本買ったそうだ。
それでジュースとお釣を取り出して振り返ると、さっきまで近くにいた犬がいない。
だけど、ちょっと離れた線路の所に犬は行ってたらしいんだ。
で、そいつが犬の名前を呼びながら近づいていくと、犬が何かを口にくわえてる。
ちゃんと躾をしなかったせいか行儀の悪い犬で、これまでもよく散歩中に拾い食いをしてたらしいんだよね。
「またかよ~」
とか思いながらそいつが近づくと、犬は拾ったものを口にくわえたまま、タタタタッとちょっとだけ遠くに走って、今度はそれを地面に置いて前足で押さえて噛みちぎり始めたらしい。
今度は犬も食べるのに夢中になったのか、そいつが近付いても逃げなかったので、犬の口を無理に手でこじあけて食べたものを吐き出させようとした。
でもほとんど飲み込んでしまった後みたいで、取り出せたのはほんのちょっとだったらしいんだけど、
よく見るとそれは泥で汚れていたけどピンク色をした何かの肉片だったらしく、気持ち悪くて慌てて遠くに放り投げて捨てたらしい。
でも、なんか手にそのグニャリとした感触が残っていて、ちょいと生臭かったので、早く公園に行って手を洗いたくて道を急いだそうだ。
そうして歩いて行くと、何やら踏切の方が騒がしい。
何か嫌な予感を感じながらも近付いて行くと、人だかりの中に駅員さんが何人かいる。
その時遠くの方から、あの車のサイレンの音が聞こえてきたそうだ…。
後から聞いた話によると飛び込み自殺があったらしく、しかも急行電車に跳ねられたので、死体はかなりバラバラに遠くまで飛び散って、回収するのが大変だったらしいです。
でね、これだけで終わると単なる事故遭遇話みたいなんだけど、この話には続きがあるんです。
それから暫くして、その友達の飼っていた犬は死んじゃった
それを聞いた兄ちゃんはなんかゾッとしたらしいんだけど、犬飼ってた友達の方は犬が死んだ悲しみで、そんなことも考える暇はなかったらしい。
で、犬の方は動物の葬儀屋に頼んで火葬にしてもらって、骨を持ち帰っていつでも側にいられるように皆で庭に埋めてあげたんだって。
しかし、それから時々夜中に庭のほうから物音が聞こえるようになって、友達のお母さんは夜中に寝ぼけて犬がまだ生きているのと勘違いして名前を呼んじゃったりしたみたい。
でも、前から近所の猫が犬の餌の残りを狙って犬がいない時に庭に入り込んだりしていたので、その友達は悲しいけどそれは猫かなんかの立てる物音だと思ってあまり気にしてはいなかったらしい。
しかしある夜、受験勉強で遅くまで起きていたそいつが一階におりてトイレに行こうとすると、庭の方から何か音が聞こえて来る。
なんか、ガリガリと土を掘っているような音が聞こえてくるので、近所の猫が犬の墓を荒らしてるんじゃないかとそいつは頭にきて、追い払おうと庭に出たそうだ。
しかしそこにいたのは猫じゃなくて、四つんばいになった女の人が穴を掘っていたそうだ。
びっくりしてそいつが動けないでいると、その人は顔をあげてこっちを見て、すごい勢いで近付いて来た。
そいつが大声で悲鳴をあげたので、驚いた家族が起き出してくると、もうそこには何もいなかったらしい。
後日、犬のお骨は掘り出して動物墓地に入れてもらったそうです。
それと、飛び込み自殺したのは女の人だったらしいです。
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