昔付き合っていた彼氏の話。
当時高校生だった私は、
思春期にありがちな『情緒不安定』で、
夜中に一人で泣く事が多かった。
当時はまだ携帯なんて高嶺の花で、
ポケベルしかなかったんだけど、
夜中泣いてると、必ず『アイタイ』と彼氏からメッセージが。
『イイヨ』と返事をすると、本当にすぐに来る。
道が混んでなくても車で15分はかかる距離なんだけど、
いつもぴったり15分で来る。
ポケベルを鳴らしてすぐ出掛けた、
としか思えないぐらいの時間。
泣いてない日はそういうメッセージが来ない、
という事に気付いたある日、
さりげなく
「何でそんなしょっちゅう会いに来るの?」
と、冗談めかして聞いてみた。
すると彼氏は、
最初は、話したくなさそうな素振りをしていたので、世間話に変えたが、
一時間程してポツリと呟いた。
「いつも夢でお前が泣いてっから、気になって来たら、
真っ赤な目パンパンに腫らしてっから、夢を無視出来なくなった」
そんな彼氏が亡くなって7年。
亡くなった7年前は、
彼氏は東京の大学に行って遠距離でした。
家業を手伝ってた都合上、
地元(京都)と東京を週二回は往復していたので、
週一回は会ってたと思います。
学校も真面目に出席していて、
睡眠時間は一日三時間ぐらい。
心配してましたが、
彼は取り合いませんでした。
五月のある日、
彼氏からポケベルに『ゴメンナ』とメッセージが入りました。
謝られる覚えはなかったので、
『何の事?』と返したものの、返事はなし。
その数時間後、
彼氏は亡くなりました。
風邪をこじらせて入院していたのは知っていましたが、
実は心臓が悪かったらしく、
過酷なスケジュールをこなす為に、
睡眠薬とカフェイン系の薬を交互に過剰摂取した結果、
過労で倒れて風邪をもらい、
弱かった心臓に負担が掛かった事が原因でした。
私はもちろん、
彼のご両親も心臓の事は知らなかった。
でも後から考えると、
おかしな事が何度もあったのです。
二人で眠ってる夜、話し声に目を開けると、
彼氏が誰かに喋りかけている事が何度かありました。
大抵は、
「何でそんなに早いんだよ」
「時間をくれ」
「あと何年でいい」
そんな内容だったと思います。
後年になって、
彼の回りの人が亡くなる前に必ず彼は予言していたと、
彼のご両親も話していました。
もしかしたら彼は、
『彼を迎えに来てた人』と会話してたのかもしれません。
人より第六感というか霊感というか、
そんな感覚が優れていたらしい彼が、
どんなに恐くて怯えていただろうか…と、
何も出来なかった事だけが心残りです。
ちなみに彼の死後、ご両親によれば、
「部屋の整理どころか、
捨てる物と誰々に譲って欲しい物を、全部分けていた」
と話してました。
「遺品の整理までしやがって。
親孝行に見えるけど、
親より先に逝くのを知ってたのに隠して、
何て親不孝な息子だ」
親父さんが泣きながら笑っていた事を、
今でも忘れられません。
コメント