奈良県の怖い話じわ怖全話

家宝の古い井戸

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祖父から聞いた話。

私の祖父は十歳の時に、
実家にあった開かずの蔵を開けてしまった事があるそうです。

祖父の実家は奈良県で、
代々拝み屋をしていたそうで、
祖父も幼少の頃から、
跡を継ぐ為に修行をさせられていたそうです。

その蔵の中には家宝の古い井戸があり、
普段は鍵をかけ封印していたのですが、
その日は、前日に祖父の父が家宝を使い、
鍵を掛け忘れた為開いていたそうです。

祖父は、

「蔵の中にある家宝の井戸は危険な物だから蔵の中に入ってはいけない」

と言い聞かされていたのですが、
好奇心に勝てずに、蔵の中に入ってしまったそうです。

中には聞かされていた通り古い井戸があり、
井戸を囲む様に鳥居が三つ立っていて、
それぞれの鳥居の下には、剣が一本ずつ祀ってあるそうです。
(日本刀の様なカタナではなく、剣ツルギだそうです)

祖父は家宝の井戸の中はどうなっているのかを確かめたくて、
蔵に入ったそうです。

と言うのも、家宝の井戸は自分達に祓えない物や、危険な物等、
手に負えない物を吸い込んでくれる井戸だと聞いていたからだそうです。

祖父が

「自分は修行しているから大丈夫」

と自分に言い聞かせながら鳥居の内側に入った瞬間、

「ゥゴォオオオオォォ」

激しい音?咆哮?と共に、
井戸に引っ張られたそうです。

「身体ではなく中身が引っ張られる」

と、祖父は言っていました。

祖父は慌てて印を組み、
祝詞を挙げて逃れようとしましたが、
まだ十歳で修行中の祖父は、
その場に踏み留まるだけで精一杯。

動けなくなってしまったそうです。

そして長い時間耐え体力も限界になり、

『もう駄目だ吸い込まれる』

そう思った時、祖父の父が駆けつけ祝詞をあげると、
祖父は鳥居の外に弾き出され、
そのまま気を失ってしまったそうです。

その後、祖父は霊力?が殆んどなくなってしまい、
跡を継ぐ事が出来なくなり、
25歳の時に両親と喧嘩別れしてしまったそうです。
(実家の家業は、弟が継いだそうです)

祖父の話だと、家宝の井戸は先祖が造った物で、
その井戸を持っているから代々拝み屋をしてきたそうです。

家宝の井戸は元々“力”を手当たり次第吸い込む物で、
何も知らずに近づくと、人間の命も吸い込むそうです。

祖父のしていた修行も、
殆んど井戸を使いこなす為のものだそうです。

祖父は、

「色々あったが、あの井戸から離れられて良かった」

と言っていました。 

現在祖父の実家とは、全く付き合いがありませんし、
祖父もこの話をする時は必ず酒が入っていたので、
真実は分かりません。

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