数年前、
5月のゴールデンウィークに、
茨城にキャンプに行ったときの話。
メンバーは友人A、B、Cと俺の男4人。
A、B、Cは、
連休さえあればキャンプに行ってるが、
俺はいつも休みが合わず、
この時が初参加だった。
「どうせ茨城なら海辺がイイ」
「周りに迷惑がかかると悪いから人の少ないところがイイ」
と、国道51号線から数百メートル細い道を入った所にある、
某海岸に辿り着いた。
その海岸入り口付近には、
先客の家族連れキャンパーがいたので、
俺達は更に海岸を進み、
200メートル程離れた砂浜にテントを張った。
昼間はサーファーがイッパイいたが、
夕食の準備をする頃には誰もいなくなり、
見渡す限りその海岸には、
先の家族連れキャンパーと、
俺達の2組のみになってしまった。
周囲に灯りもなく早めに寝る事にしたのだが、
テントは3人用だったので、
並んで寝るのは3人が限界。
そこでA、B、Cは川の字に。
俺はその足側に一の字に。
つまり『山』みたいな形で寝た。
夜中、俺は尿意を催し目を覚ました。
携帯で時間を確認すると、
2時ちょっと過ぎだった。
こうゆう話は大概2時だ、
と全く信じてなかった俺だが、
体を起こそうとした時、
波の音と明らかに違う音が耳に入り、
俺は体を硬直させた。
多分5メートルぐらいは離れているであろうその音は、
「ザッザッザッ」
と俺達のテントに近づいてくる。
その音の重み、
間隔から人の足音だと直感した。
ちょっと待て。
少なくともテント越しに灯りは見えない。
灯りも無しにこんな砂浜を歩くのは不可能だ。
家族連れキャンパーは南に200メートル程で、
こんな所まで来るはずがない。
しかも足音は東側から聞こえる。
…第一、これは(生きてる)人間か?
俺の頭はパニック状態。
足音は既にテントの外数十センチまで近づき、
俺達のテントの周りを時計回りに回り始めた。
「どう考えてもヤバイ!」
友達に声をかけようと思ったが、
大声を出すのも怖い。
しかも友達は俺に足を向けて寝ているので、
頭部までの180センチ程度が異様に遠く感じる。
この状況で寝袋から出る勇気もない俺は、
尿意も忘れ、寝袋にすっぽり頭を入れ、
足音が聞こえなくなるまで我慢する事にした。
しかもその足音、
テントを一周する毎に俺の所で停まり、
1~2回テントの布を押していく。
テントの骨組が歪み、
「ギシィィ」と嫌な音が響く。
俺は必死に脳内で歌を歌いながら、
寝るんだ!寝るんだ!と繰り返し、
ふと気が付いた時には、
外も明るくなっていた。
俺は尿意を我慢していた事を思い出してテントの外に飛び出し、
なんとか粗相をせずに済んだ。
ホッとしてテントに目を向けて愕然とした。
テントの周りには、
何週したか分からないほどの足跡があり、
それは海の方から来て、
また海の方に戻っていた。
俺は友達3人を叩き起こし、
事情を説明して、
逃げるようにその海岸を後にして、
その日は他のキャンパーが沢山いる、
公共のキャンプ地に泊まった。
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