じわ怖全話

横切った

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中学生のころのある正月、友人2人と私とで初日の出を見に行くことになりました。
朝方の5時ごろ、日の出までまだ間があったので友人の部屋(2階)にとりあえずお邪魔、
炬燵を3人で囲むことに。
しばらくして家主の友人が階下にお茶を入れにいき、私は階下への階段を背にする壁側に、
もう1人の友人は私の斜め前に座り、2人でぼんやりしていました。
すると私の背後で人の足音が。
とん、とん、とん、という音は、明らかに階段を上っています。
「あー、えらい早いにお茶いれてくれたなあ…」と思い、家主の友人が部屋に入ってくるのを
待ちました。しかし、足音がやんでも部屋のドアは開きません。
「寒いのに廊下で何やっとんの…?」と思い、ドアを開けようと振りかえろうとしたとき。
私の背後、つまり私の背中と壁との間を すっ… と横切る影を感じました。
「今の何?」と思うと同時、「これは何か『コワイ』もんだ!」という、ぞっとする感覚が
背筋に走りました。

しかし、ここでもう一人の友人まで怖がらせてはならないと思い、
私は友人の方に向き直りました。
「なあ、さっきな…」
そのまま無理に明るく、友人に話しかけようとしました。
しかし向き直った友人の方が、私の方をじっと凝視しています。
「ど、どしたん?」
と驚いて聞いた私に、友人が一言。
「今、あんたの後ろを誰かが通っていった・・・。」

そのまま2人で1分ほど固まっているところに、家主の友人がやっと
階段を上がってきて
「何あんたら無口になっとんの?」
と不思議がられました。
(勿論、足音は彼女の悪戯などではありませんでした)。

今となってみるとたいしたことない話ですが、このときには正月気分なぞ
銀河のかなたに吹き飛びました…。

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