ぼくの住んでいるアパートは大学のすぐ近くにあります。
いわゆる下宿というやつです。
ぼくの通っている大学は田舎にあって、駅から大学までバスが出ているのですが、
それに乗っても15分くらいかかります。
その時間が勿体無いし、朝早起きするのが苦手なので大学の近くを選んだのです。
この通り田舎なもんですから夜になるとかなり暗くなります。
ぼくの住んでいるアパートというのも、国道から少し奥へ入ったところにあって、
隣に川が流れているおり、夜は本当に真っ暗です。
夜中に出かける人はほとんどいません。
それでも、夜は静かでかぜも気持ちいいし暮らすにはとてもいいところでした。
でも、最近。なんかへんなことが起こるんです。
ちょうど1ヶ月前のことです。
その日は大好きなTV番組が野球で押して、見終わって一息ついたのがちょう
ど1時20分くらいだったでしょうか。明日も早いのでそろそろ寝ようかと思っ
て布団にもぐりこみ、蛍光灯から垂らしてある紐を引き。電気を消しました。
そして、目をつぶり一呼吸、二呼吸ぐらいしたでしょうか・・・。
ドンドンドン!ドンドンドン!
と部屋の扉を叩く音がします。
「わっ・・・。」
ぼくはびっくりして飛び起きました。
ドンドンドン!ドンドンドン!
(びっくりしたぁ、だれだろ・・・。)
そう思って、手探りで蛍光灯の紐を探して
「よ・・・いしょ。」
電気をつけました。
すると、その扉を叩く音が急に止みました。
部屋の扉に小さなすりガラスが付いているので、それでぼくが起きたとわかった
のでしょう。ぼくはそのまま布団から出て、
「は~い。」
と、扉を開けました。
・・・が、そこには誰もいません。廊下は省エネの為かどうかわかりませんが、
2つに一つに割合でしか蛍光灯はついておらず、部屋の中に比べると廊下はかな
り暗く廊下の端も良く見えないくらいです。
「・・・・・・。」
ぼくはそのまま扉を閉め、また布団にもぐりこみました。
少し寒気がしたような気がして、ぎゅっと布団を握り締めて体にぴったりと密着
させて右手だけを布団の端からだし蛍光灯からぶら下がる紐に手を掛け、ぷつんぷ
つんと蛍光灯の灯りを消しました。
そして、一呼吸、二呼吸したところで、
ドンドンドン!ドンドンドン!
また、なにかが扉を叩く音がします。ぼくは布団を頭からかぶりました。
ドンドンドン!ドンドンドン!
まだ扉を叩く音が止む気配はありません。心なしかその叩く勢いが強くなって
いるような気がします。ぼくは布団を頭からかぶったまま右手だけを出して、蛍
光灯の紐を手探りで探します。
(どこだ?どこだよ・・・。)
気持ちがあせってなかなかつかめません。そして
(あった。)
と、その紐を引きました。するとパッと灯りがついて部屋が明るくなった気配
がします。ぼくは恐る恐る布団の隙間から部屋の様子を見て、そして一気に布団
を跳ね除けました。扉の音は消えていました。
「・・・・・・。」
その夜、ぼくは蛍光灯の灯りを消すことが出来ませんでした。
ぼくはそれ以来、夜に電気を消すことが出来なくなってしまいました。
毎晩、消そう消そうと思うのですがどうも踏ん切りがつきません。でも、
明日は彼女がぼくの部屋に来ると言っています。だから、今晩こそは電気
を消して寝ようと思います。彼女に電気をつけてないと寝られない、なん
て言うのは恥ずかしいですからね。
それじゃ今日はそろそろ寝ようと思います。
また手紙下さいね。
~おばあちゃんへ~
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